【レポート】第5回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座
2024年夏開催予定の医療的ケア児の避難訓練に向け、「サポートに入る支援者が正しい知識や共通認識をもつことが重要である」との考えにより実施しておりました、医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座第5回目が終了しましたので、講座の様子をご紹介いたします。
医療的ケア児の避難訓練の詳細や申し込み方法については、近日中に詳細を公開予定です。
今しばらくお待ちください。
過去の講座レポートはこちらからご覧いただけます。
▷【レポート】第1回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座
▷【レポート】第2回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座
▷【レポート】第3回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座
▷【レポート】第4回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座
開催概要
開催日:2024年6/18㈮ 14:30~
テーマ:「想定:人工呼吸器装着2歳児の準備から避難生活3日 避難訓練マニュアル作成」
対象者:・地域の防災担当者、市町村の防災担当者、防災などに興味をお持ちの方、災害時支援などお考えの方、支援者、医療関係者、当事者ご家族 etc…
講師:山中 弓子 氏
講師
第2回目から第5回目までの講師は、親子支援・災害看護支援*てとめっとの代表で、災害看護師をされている山中弓子氏です。
この日も、令和6年に起きた能登半島地震へ災害支援に入っているため、リモートで講師としてご参加くださいました。
2016年の熊本震災、2018年の岡山県真備町の西日本豪雨が起こった水害現場も実際に支援に入り、寝たきりの高齢者や医療的ケア児の対応も経験されています。
当日の様子
講座の実施時間は90分弱、リアルタイムでの参加者は7名でした。
【支援者養成講座】は医療的ケア児、その他支援が必要な方のため、そしてそのご家族の支援のために実施しています。
この講座をきっかけに「支援とは何か」について学んでいただければと開催しております。
最終ゴールは、【支援者養成講座】全5回終了後にひなんピングが構築している「イッツミー!」(医療的ケア児自己紹介カード兼避難計画書)に当事者の方に登録していただいて、地域連携を取りながら実際に避難訓練を実施するところまでです。
災害が起きたとき、日常で行っていたことができなくなります。
「支援する人たちが環境を整えるサポートをすることが重要」になり、そうすることで、少しづつできることが増え、被災者が日常に戻れるサポートをすることが重要となります。
本日の講座内容はこちらです。
【1.水害時はどうなる?!】では、水害が起きたときの想定から開始です。
水害が起きたとき、一気に水が家の中に浸水してくるという最悪の状況を想定し、いかに早く逃げるかがPOINTです。
振り返り内容は、第2回講座「避難生活と減災対策、地域コミュニティの重要性」と第4回「想定:風水害発生時における、人工呼吸器装着2歳児の準備から避難生活3日間」をご覧ください。
今回は実際に水害を想定して避難訓練をしてみたご家族のお話から「普段の外出とは違うので急がなきゃいけないし、ほかの子どもたち(きょうだい)のケアまで手が回らなかった」というお母さんの感想もありました。
人工呼吸器を装着したお子さんだと装備が増える分、バッテリーの準備や逃げるまでの時間もかかることが予測されるます。
避難訓練マニュアル作成(想定:人工呼吸器装着2歳児の準備から避難生活3日)
今回のテーマは「避難訓練マニュアル作成 想定:人工呼吸器装着2歳児の準備から避難生活3日 」です。
想定
岡山市内で6月14日㈮14:30分に西日本全域に線状降水帯が発生
岡山市内で水害
父、母、6歳女児、2歳の男児(医療的ケア児:人口呼吸器装置、寝たきり)の4人家族の準備~避難生活3日間
家屋浸水5M
今回の想定も前回と同じ家族構成です。4人家族でそのうちの2歳の男の子が寝たきりの人工呼吸器を装置している医療的ケア児家族の想定です。
【避難時の課題】では、ハザードマップを元に水害のときの注意点として内水氾濫といって、大きな川の氾濫、下水から氾濫、大きな川からの主流から氾濫、用水路からの氾濫なども想定されます。
実際水が浸水してからの避難は難しくなるので、日没前の早めの避難が求められます。
【避難時の配慮】については、「避難準備~避難~避難先」で考えられる配慮や準備や行動などについて、第4回目で詳しくお話しているのでそちらをご覧ください。▷【レポート】第4回目 医療的ケア児の避難訓練支援者養成講座
加えて「情報整理カード」「避難時に必要な物品」「連絡先シート」「個別避難計画書」「要支援者マイ・タイムライン」「バッテリー作動時間」などみんなで情報共有できるものをあらかじめ準備しておく必要がありますが、作成段階からいっしょにサポートできることが理想的です。
また、みんなで共有できるように紙で用意しているものは、水害を想定してラミネートやジップロックなどで水に濡れない工夫をしておくことも忘れずアドバイスしてくださいね。
このあと紹介する「イッツミー!」にも「情報整理カード」「避難時に必要な物品」「連絡先シート」「個別避難計画書」「要支援者マイ・タイムライン」「バッテリー作動時間」などの情報が入力できる項目があります。
【避難訓練マニュアルを作ってみよう】
「イッツミー!」を開き、実際に講座受講者もいっしょに登録しながらすすめました。
「2歳の男の子が寝たきりの人工呼吸器を装置している医療的ケア児」の想定で実際に「避難バック」の準備を考えながらすすめました。
ひなんピングの「イッツミー!」では、看護師と防災士が考えた「医療的ケア児に必要な物品」が選択項目に入っているためサクッとチェックしながら準備をすすめられますよ♪
「医療物品」だけでも準備物の多さがよくわかりますね。
次に「消耗品」で、おむつ、ごみ袋、ウェットティッシュなどを「その他」の項目で追加できます。
「食糧」の項目についてはこのような項目になっています。
「その他」の項目には予備電源や延長コードなど「あったら便利なもの」がチェック項目としてあげられています。
S字フック、懐中時計、電池、お気に入りのもの、時計、カイロ、クッションなども追加で記入しました。
タオルは多めに!清潔を保つために口腔ケア用品も忘れずに!と、山中氏からアドバイスいただきました。
医療的ケアのあるお子さんの避難グッズだけでも本当にたくさんの荷物になることが想定されます。
これに加えて家族の避難グッズもあるのですから…
サポーターとして荷物を運ぶ手助けができるようにに心がけたいですね!
最後に「避難時及び緊急時に医療従事者へ表示ページの情報公開を許可する」にチェックを入れることで、当事者家族以外もこの情報をネット上で共有することができるようになります。
つづいて「避難場所」です。
「避難場所情報」を「追加」ボタンから入力していきます。
「災害の種類」ごとに避難場所を入力できるようになっています。
今回は水害の想定なので「水害」にチェックして、水害時の避難情報として「避難場所(名称)」「住所」「電話番号」「管理者」などの入力をします。
避難経路についても「居室から屋外への避難経路について」「屋外から避難場所への避難経路について」を障害物、段差、電源、空調、水源、トイレ、毛布の有無など細かく入力していきます。
「その他」の項目に、予測されることを入力しておくと、周りの方が何に気を付ければいいのか予測することができますね。
今回は「荷物が多いので積み込みが大変。
逃げるタイミングによっては渋滞の可能性がある。
避難所の駐車場から、避難スペースまで移動が大変。
荷物を一回で運べない可能性があるので、何回か往復する可能性がある。
電源の確保が課題。空調が止まっている場合は体温管理が必要。」などを追記しました。
あらかじめわかっていると対策のヒントになります。
「写真」については、避難経路のルート、駐車場、避難スペース、電源の位置、トイレなどの写真を撮って貼っておくと安心です。
「保存する」するとこのように内容が一覧になって表示されます。
印刷も可能なのでプリントアウトしたものをラミネートなどして管理しておいてください。
次に「医療機器情報」を入力していきます。
ファイルに用意されていると思いますので、それを見ながらチェックを入れてみてください。
設定圧は病院を受診したタイミングで変わることもありますので、その都度入力の変更をするように心がけておいてください。
機器の種類などがわかりやすいように写真を撮っておくと便利です。
お子さんの病状、お薬、現状、かかりつけ医、訪問看護先、性格とこだわりなどの情報を入力するページもありますので、事前に入力しておくことで、日常的にお子さんの情報共有管理がしやすくなります。
避難時には特にストレスが生まれやすい環境下になるため、「性格とこだわり」がわかると配慮するポイントがわかり、サポートにも役立つと思います。
ぜひ、「イッツミー!」をいっしょに入力してみてください!
「だれが、だれと」
「どこへ?どうやって?」
「医療的ケア児のケア」
「きょうだいへのケア」
「家族へのケア」
これまで講座の中で何度も確認してきたサポートのポイントとしては上記の項目を一緒に考えて、書留めて共有しておくことで漏れなく行えると思います。
タイムスケジュールをしっかり立てて避難できることが理想的なので、実際に自宅から避難場所までの避難訓練をやってみることをおすすめします。
避難訓練をする場合は保健師さん、民生委員さんはじめ地域の方、学校関係者、普段利用している医療機器メーカーさんにも声をかけて参加してもらうこともできますので、ぜひ声をかけて参加してもらってください。
実際にやってみないとわからないことの方が多いので、実際に避難訓練をしてみて、みんなで振り返りをする時間を大切にしてくださいね。
ひなんピングでは「個別避難計画書」として避難訓練用のシートも準備しています。
今回の講座で教えてもらった必要項目がぎゅっと詰まった内容で、シートの手順通りにしていけば避難訓練ができるようになっています。
事前に「もし、お子さんの体調が悪くなった場合はどうするか」などの基準を決めておくことも書き込めるようになっています。
ひなんピングでは、今回の講座内容を生かしながら要救助者の必要情報を「イッツミー!」に入力し、それをもとに「個別避難計画書」を用いた医療的ケア児の避難訓練を実施します!
わたしたちでもできるサポートとは、どのようなことか?
実際に行動に移しながら関わっていきたいと思います。
参加者さんの声
最後に参加者さんから質問、感想をいただきました。
「イッツミー!」から「個別避難計画書」への流れがいまいちわからなかったのでもう一度教えてほしいという質問がありました。
答えとしては「イッツミー!」を入力してもらって、その内容を見ながら「個別避難計画書」に記入していく方法になります。
ゆくゆくは、「イッツミー!」と「個別避難計画書」を連動できるように構築中です。とのことでした。
また、避難計画を考えていたところで、「イッツミー!」が紐づけられていて画期的だと思いました!という感想をいただきました。
「イッツミー!」も「個別避難計画書」も家族だけで作成するのではなく、保健師さんや訪問看護さんなどと計画、記入していけるようにぜひいっしょに作成してみてくださいね。
講座を見逃した方もご安心ください!
第1回目「避難行動要支援者とは(在宅療養者や医ケア児の実際)」
第2回目の「避難生活と減災対策、地域コミュニティの重要性」(2018年7月岡山県真備町の水害現場を実際に支援した講師が、現場あるある、避難事情をお話しします)
第3回目「大地震発生時における、人工呼吸器装着2歳児の準備から避難生活3日間」
第4回目「風水害発生時における、人工呼吸器装着2歳児の準備から避難生活3日間」
第5回目「避難訓練マニュアル作成 想定:人工呼吸器装着2歳児の準備から避難生活3日間 」
と、これまで全5回の【支援者養成講座】が終了しました。
※ただし、限定公開のため指定のURLからでないと視聴できません。
ご興味のある方は、下記よりお申込みくださればご視聴可能です。
申込期間は終了しております。
お申込みいただきありがとうございました。
第2回目以降の講師のご紹介
山中 弓子 氏
所属:親子支援災害看護支援「てとめっと」代表
日本災害看護学会会員
青年海外協力協会(JOCA)災害支援チーム能登町ベースマネージャー
資格:看護師、防災士
日本セラピューティック・ケア協会認定セラピスト
国際リドルキッズ協会認定タッチケアセラピスト
(トラウマを受けた子どものためのタッチケア・NICUタッチケア・ベビーマッサージインストラクター他)
この事業は、ドコモ市民活動団体助成事業の助成を受けて運営しています。
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3年前に立ち上げたひなんピング事業↓↓↓
過去に実施した防災キャンプの様子はこちら↓↓↓