ホンネ

ホンネ
2022/09/30 井上つばき

第2章2-9④取り組んだこと

第2章2-9④取り組んだこと

うまくいかないと感じたときに、これまでも何度も椿と話し合ってきました。

でも、話をしても翌日にはケロっとしている椿をみて、椿の本心を書き出してもらいたいと考えるようになりました。

椿自身、どうしたらいいかわからなくなっていた自分の心の声を少しずつ聴けるようになっていきました。

椿と「正解」を探し歩きはじめる

発達障害の診断がついたのは2020年9月のことですが、2019年の夏ごろには行き違いや生きづらさを強く感じ、
病気の進行と心のバランスが崩れ始めたのを感じていました。

椿とは毎日じっくり話をしていましたが、いつも同じことの繰り返しのように感じていました。

そこで、心機一転、2020年の年明けに手帳を用意し、気持ちを共有できるように、忘れず振り返れるように、一緒に書いて残していくことにしたのです。

はじめは一緒に楽しく書いていくようにしました。徐々に椿が自分から進んで書いていけるように促していきました。

椿は心が素直な子だったので、自分がいけないことをしたことは理解できていたし、
それについて一人で反省することもできていました。ただ、なかなか行動はともなってこず、
その瞬間の自分の欲求に負けていたのかもしれません。

当時は親子で「正解」を手探りで探し続けていました。

メモ帳で気持ちの整理整頓を

◎手帳を書くときに心がけたこと

①話し合い・・・お互いの言い分を話せるように心がける

②目標・・・・・自分が何を目標にしているか明確にして意識を統一する

③アウトプット・・1)自分の言動、考えを理解するために問題が起きた時に書き出してみる           

2)それについてどう思うかを自分で考える

         3)今後どうすればいいかを明確にする

④課題取組・・・自分のできる範囲で無理のない課題を立て、共有し見守られながら取り組む

何かつまずきがあったときに、本人が問題点や困りごとを書き出して、自分で考えた解決策を書いてもらうようにしていました。

このときは不登校気味になっていたこともあり、学校での過ごし方や問題などを書き出して、解決策を考えられるように取り組んでいました。

アウトプットすることで頭の中が整理でき、それまでは他人任せや放置していた
「自分の困りごとについて自分で考える」ということをするようになっていきました。

向き合う姿勢が整い始めました。

ふせんボードで「視える化」

発達障害の診断がつき、訪問診療の先生が加わってからは「できていないこと」「できた方がいいこと」
を本人と確認しながらふせんに書き出してボードに貼り付けていきました。

こうすることで本人が抱える問題点、困りごとの「視える化」ができるようになります。

これをよく目につくところ(本人の希望でトイレ内)に置いておくことで、視覚で確認することができ、
椿にとってはインプットしやすくなりました。

時間はかかりましたが、少しずつ「自分で解決してみよう」と取り組む姿勢がみられるようになり、改善傾向に進みました。

ボードには「してほしいこと」「ルール」なども貼っていました。

家族もボードを確認するようにしていたので本人の困りごとや、取り組み、頑張りの共有も図ることができ、
本人のやる気UPにも繋がりました。

椿はスケジュール管理も苦手だったので、ホワイトボード式のカレンダーを用意して、それもトイレ内に置くようにしました。

すると、それまでよりもスケジュールを理解できるようになりました。

トイレは個室でひとりの空間だから集中できて、椿には良かったみたいです。

発達障害の診断がついてからの困りごとは、ふせんとメモ帳を併用して解決策を考えられるようになっていきました。

自分で考え自分の言葉で書き出すことで、させられているのではなく、しようとするようになっていきました。

また、お薬の飲み忘れ、飲んだふりをして隠す行為を改善するために、椿の好きなハロウィンデザインでお薬ケースも用意しました。

同時にスマホのアラーム機能を使って内服予定時間にアラームが鳴るように設定しました。

このアラームが鳴って本人が自分で取りに行くのを家族は黙って見守ります。

もし、アラームを消した後、取りに行く様子がなかったり、時間が過ぎても残っているお薬があった場合は声かけをするようにしました。

こうすることで、まずは本人が頑張って取り組む姿勢を作れ、家族間でも共有できるようになり、飲み忘れや隠す行為が格段に減りました。

タスクノートで「自己肯定感UP」

「タスクノート」を作って「できるようになりたいこと」を椿が自分で考え課題を出し、1日~2週間の期間で設定し、
できたらシールを貼るという取り組みをしていきました。

当時椿が飼っていたハムスターのななちゃんをマスコットキャラクターとして一緒にがんばってもらいました。

課題を見事クリアしたら大好物の男梅タブレットのご褒美があり、やる気UP!

課題は本人が無理なく取り組める簡単なものからはじめていきます。

それまで「できない」というレッテルを貼られてしまい失ってしまった自尊心を育てるために簡単な目標を立てて
「できる」ということを積み重ねていくことが大事です。

自分で課題を見つけることで、自分の困りごとを理解できるし、
シールを張っていくことで「視える化」と成功体験の積み重ねで「自己肯定感UP」ができます。

椿が少しずつ「できる」ようになったのは「周りが自分の困りごとを理解して寄り添ってくれている」ことが一番の向上ポイントだったと思います。

【関連記事】

『病気と共に生きる』もくじ

1-1 椿の軌跡 

1-2 椿のカルテ

2-1 心臓病のお話

2-2 椿の病気発覚

2-3 椿の病気解説 

2-4 グレン手術と合併症

2-5 ①フォンタン手術と術前治療

      ②ペースメーカーのおはなし

      ③フォンタン手術後の生活

2-6 ①フォンタン術後症候群

      ②はじめての余命宣告

2-7 ①難治性腹水と腸閉塞と臍ヘルニア手術

      ②病院外で生活するために

      ③「チーム椿」の結成!

2-8 ①発達障害発覚までの経緯-1

      ②発達障害発覚までの経緯-2

      ③発達障害発覚までの経緯-3

      ④発達障害発覚までの経緯-4

      ⑤発達障害と難治性腹水の治療の関係

2-9 ①発達障害とは?

      ②本人へ伝える

      ③発達障害の治療は支援?

      ④取り組んだこと

      ⑤時にはお互い休憩も大事

      ⑥もしわが子が発達障害かもしれないと思ったら…

      ⑦社会的支援について

2-10 ①命のカウントダウン

        ②余命宣告後の過ごし方

2-11 ①最期の14日間-1

        ②最期の14日間-2

        ③椿の生きた最期の1日

        ④椿、旅立ちの日