ホンネ

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2022/10/21 井上つばき

第2章2-9⑦社会的支援について

第2章2-9⑦社会的支援について

ここでは社会的支援についてお話していきます。

私は椿と過ごしてみて、発達障害と向き合って生活改善を試みるときの強い味方は必ず必要だと感じました。

でも、突然のことだったしなんの知識もなく、どういった支援があってどれを利用できるのか、よくわからないまま進み続けました。

私たちは結局、実際に利用することはありませんでしたが、そこまでのプロセスをご紹介します。

発達障害の診断を受けるメリット・デメリット

今の社会では発達障害の診断を受けることで起こるメリット・デメリットを考えなければなりません。

診断を受け、発達障害があることをオープンにしたとき、思うように理解が得られなかったり、差別的な扱いを受けたりする場面に直面する可能性もあります。

先に示したように症状はあるけれど診断は受けずにグレーゾーンとして生活しているお子さんも多くいます。

診断を受けるか受けないか選択できるからこそ、子どもの将来を考えたときにどうすればいいのか…と悩まれる親御さんの声もよく耳にします。

家族と本人の状態にもよると思いますが、椿の場合は、これまで抱えてきた「生きづらさ」の理由が性格や努力不足ではないことがわかり、自分を責めていた意識や、「どうして?」と悶々と深まっていった家族とのわだかまりから解放されました。

また、否定的に捉えられていた娘の行動に対して理解を得られる可能性に新しい世界が見えた気がしました。

さらに、治療や環境調整、支援の利用などの対処法がわかることで、症状や困りごとの改善に向けての具体的な道筋も見えはじめた頃でした。

明らかになった自分の特性などを「症状や困りごとを解消していくきっかけ」として捉え、支援や合理的配慮を模索するための道しるべとして使っていける『生活の質の改善手段』として考えることもできるかもしれません。

心臓病 医療的ケア児 発達障害

相談・支援先

◎地域の相談窓口

【保健所・福祉事務所・子育て支援センター・児童相談センター】

男の子は言語の遅れや多動性が目立つようになる3才児検診の時に親から相談をしたり、相談員から指摘があったり、保育園の先生から指摘があって気が付くキッカケになったという話しを良く耳にします。

そういった場合は地域の相談窓口や児童家庭支援センターに相談することを勧められることが多いようです。

各自治体によって異なりますので、お住まいの保健所や福祉事務所に電話相談してみてください。

◎病院・専門医

【子ども:小児精神科・児童精神科】【大人:心療内科・精神科】

発達障害の診断や治療が行える医療機関。

「発達外来」などの専門外来を設置している医療機関も少なくありません。

事前に医療機関に電話相談してみて下さい。

近くに見つからない場合や、予約が当分先まで埋まっていてなかなか受診できないケースも少なくありません。

その場合は地域の相談先を並行して活用するといいようです。

◎教育機関

【教育相談・スクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター】

学校に就学している場合は、スクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーターなどに相談できます。

学校によって利用できる日時が異なるため担任や養護教員などに相談して取り次いでもらいましょう。

地域の保健所や発達障害支援センターなどで相談する場所を作っておくと、医療機関や活動地域の情報、NPO法人の活動、自助グループや家族会なども紹介してもらえるケースがあるかもしれません。

繋がりを作っておけば悩みを共有できる場所ができたり、ヒントをもらえるチャンスができるかもしれません。

ひとりでは見つけられない支援の場などとも繋がりができ、支援がスムーズになることもあるかもしれません。

療育ってなに?

療育(発達支援)とは、障害のあるお子さまやその可能性のあるお子さまに対し、個々の発達の状態や障害特性に応じて、今の困りごとの解決と、将来の自立と社会参加を目指し支援をすることです。

「療育」という言葉はもともと身体障害のある子どもへの治療と教育を合わせたアプローチを表す用語として使われていましたが、今は障害のある子どもの発達を支援する働きかけの総称として使われることが多いです。なお、「発達支援」という言葉もほぼ同義語として使われています。

『療育(発達支援)とは』-LICOLITAジュニア

療育(発達支援)ではお子さまの現在の困りごとや発達の状況、障害特性に応じて、個別の支援計画を作成し、支援を進めていきます。例えば言葉をつかったコミュニケーションが難しいお子さまについては、発音の仕方を教えたり、コミュニケーションの取り方を教えたりします。また、お子さまのご家族への支援もあわせて実施されています。

『療育(発達支援)とは』-LICOLITAジュニア

椿も療育を受けるため、療育手帳を取得しに地域の福祉事務所に行きました。

その時に療育を受ける時に必要な「通所受給者証」も作りました。

相談窓口の方から療育を実施している施設の資料を受け取りました。

福祉事務所では各施設の療育内容などは把握していないため案内ができないという話しで、「お母さんが自分で施設に電話して、実際にお子さんと行ってみて決めた方が良いです。」と言われました。

帰宅後、さっそく児童発達障害支援センターに電話相談して相談支援員を探したり、療育先を探したりしましたが、ネットで検索しても施設の資料が古かったり、GoogleMapにも出てこなかったりと情報がない施設も多く全てが手探りでした。

手当たりしだいに電話をかけ続ける日々が続きました。

何度も同じ内容を1から10まで話すだけでも精神的に辛かったですし、会う約束ができても1ヶ月先の話ばかりでした。

椿の不登校という状況と病気の進行具合から考えてもなるべく早く利用したかったのですが、そう上手くはいきませんでした。

だいたいの施設は5~10人程度の児童の受け入れで、通所希望の児童が多く、どこも空きが出るまで待機するしかありませんでした。

そもそも14歳という年齢でも入れる施設に限りがありましたし、椿はある程度のことはできていたので、どこに通うのが適切なのか判断するのは難しく感じました。

その後、都合のついた療育施設2件に、椿と一緒に行き見学させてもらいました。

椿はどちらも気に入った様子で「早く通いたい!」と楽しみにしていました。

でも、どちらも定員いっぱいで「すでに『空き待ち申請』をされている方が3名ほどいます」と説明を受けました。

そうしている間に1ヶ月経ち、会う約束をしていた地域の自立支援センターに相談に行きました。

『今後の相談先』として一括して相談支援をしてもらえることになり、やっと安心することができました。

その後すぐに、椿に合いそうな施設が1件見つかったと連絡をもらいました。

同年代の子どもたちと養育ができる施設に入所できる運びになりそうでした。

でも、楽しみにしていた見学の日にはもう、本人はそれに取り組める状態ではありませんでした。

やっとここまで辿り着いたのに、椿が実際に療育を受けることはありませんでした。

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輸血を受けているところ

療育以外の支援

スクールカウンセラーの紹介で、療育以外にも受けられる支援として、中学校生活においての困りごとを支援してくれる事業にも出逢いました。

学校に直接支援員が来てくれて、椿の困りごとを手助けしてくれるものです。

これも3月に一緒に学校見学し、来年度中学3年生から本格的に導入を検討して話が進んでいたのですが、一緒に見学をする事もできませんでした。

もっと早く知ることができて動き出せていたら…学校生活も違っていたのかもしれません。

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【関連記事】

『病気と共に生きる』もくじ

1-1 椿の軌跡 

1-2 椿のカルテ

2-1 心臓病のお話

2-2 椿の病気発覚

2-3 椿の病気解説 

2-4 グレン手術と合併症

2-5 ①フォンタン手術と術前治療

      ②ペースメーカーのおはなし

      ③フォンタン手術後の生活

2-6 ①フォンタン術後症候群

      ②はじめての余命宣告

2-7 ①難治性腹水と腸閉塞と臍ヘルニア手術

      ②病院外で生活するために

      ③「チーム椿」の結成!

2-8 ①発達障害発覚までの経緯-1

      ②発達障害発覚までの経緯-2

      ③発達障害発覚までの経緯-3

      ④発達障害発覚までの経緯-4

      ⑤発達障害と難治性腹水の治療の関係

2-9 ①発達障害とは?

      ②本人へ伝える

      ③発達障害の治療は支援?

      ④取り組んだこと

      ⑤時にはお互い休憩も大事

      ⑥もしわが子が発達障害かもしれないと思ったら…

      ⑦社会的支援について

2-10 ①命のカウントダウン

        ②余命宣告後の過ごし方

2-11 ①最期の14日間-1

        ②最期の14日間-2

        ③椿の生きた最期の1日

        ④椿、旅立ちの日