ホンネ

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2023/03/31 井上つばき

第3章3-3⑥医療との関わり

第3章3-3⑥医療との関わり

付き添い入院の変化

心臓病 医療的ケア児 在宅看護

小学5年生から長期入院が続き、長引く入院に付き添い入院が難しくなっていきました。

長期入院が続くことは、生活の基準をしっかり持って病気と付き合っていかなくてはいけないことだと改めて考えるキッカケになりました。

それまでは24時間付き添い入院必須だったのですが、余命宣告からの脱出劇を終えてから、今後の入院生活について「昼間は椿と病院で過ごし、夜間は椿を看護師にお任せし、私は家に帰りたい」と病棟に相談しました。

心臓病 医療的ケア児 在宅看護

子どもたちにとって母親は私ひとりだけ

息子が9ヶ月のときに乳児院に預けた過去の経験から、「子どもの1日のなかに母親といる時間を作ってあげたい」という考えを強く持っていました。

当時、病院内に治療ではなく患者の生活をサポートしてくれるソーシャルワーカーがまだ存在していませんでした。

そのかわり、それまでなかった入退院センターができ、入院中のサポートや退院後のサポートをしてくれる相談員が配置されるようになっていました。

偶然にも、椿の幼少期に小児科病棟の看護師として勤務していた方がサポートについてくれたお陰もあって、理解が深く、とても寄り添ってくれました。

心臓病 医療的ケア児 在宅看護

それまでは、病院の中では守られていた「患者を第一に考える」という空気感から、なかなか自分の意思をはっきり言えなかっったところもありましたが、「息子のとの時間も大切にしたい」という私の考えを認めて、応援してくれている方がいることで安心して自分の意思を伝えることができました。

先生と看護師に相談したところ、病院から自宅が近かったので(車で10分)、「緊急の時はすぐに駆けつけること」を条件に、前向きに受け入れてくださいました。

本来なら、病院は患者の病気と心の安定を優先するべき場所です。

だから母の付き添いが必要だという考えもあると理解しています。

でも、各家庭それぞれ事情があります。

命はもちろん大切だし、椿には死というものが近いのかもしれないことは理解していました。

椿と過ごす人生も息子と過ごす人生も1回きりだから、どの瞬間も大切にしたいという私のわがままを聞き入れて協力してくださったことに、本当に感謝しています。

なにより、椿本人が「ひとりでも頑張ってみる」と言ってくれたからこそ、こうして新しいスタイルで過ごすことを、病院側に提案することができました。

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弟の6歳のお誕生日に椿から本のプレゼント

本当はそばにいてほしいけど「お姉ちゃんだから」と、弟がさみしくないようにいつも気を強くもっていてくれた家族思いな椿は本当に立派でした。

心の成長と心の安定

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こうして病院側が寄り添って、私がいない時間帯に椿と深く関わりを持ってくれたことで、椿の心の成長にも繋がったと感じます。

それまでは「ママがいるから大丈夫」「ママがいないと無理!」という感じでしたが、少しずつ自立も進み、思いやりもより深いものになっていきました。

看護師や先生との関係性も変化していきました。

それまでは母を介して先生や看護師と会話することが多かったのですが、自分のことだから自分で言わなければならない、自分が関わりを持たなければ伝わらないということを理解し、少しずつ椿自身が関わるようになっていきました。

看護師も先生も夜間をひとりで過ごし、病気と闘っている椿によくしてくださり、時間があるときには椿の様子を見にきてくれたり、いろんなお話をしてくださっていたようです。

院内で行われる行事にも先生や看護師が一緒に参加してくれました。

心臓病 医療的ケア児 在宅看護

処置がある日は看護師が椿のためにシートに応援メッセージを描いてくれたりもしました。

心臓病 医療的ケア児 在宅看護

「私がいなくても椿が安心して過ごせるように見守ってくれる、椿が信頼できてなんでも話せるような人をつけてほしい」とお願いしたところ、小学6年生のころから心理の先生がついてくれるようになりました。

ほとんどベッドの上で過ごしていた椿は、担当心理士の斎藤さんのことが大好きで、いくらしんどくても来てくれる時間が近づくとソワソワしはじめ、時間ばかり気にしていました。

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斎藤さんが来てくれると歓喜をあらわに満面の笑みでお迎えしました。

いつも嬉しそうに一緒にゲームをしたり、食べ物の話をしたり、恋愛トークをしたり。

なんでも「うんうん」と聞いてくれ、「椿ちゃんはどうしたい?」と寄り添ってくれた斎藤さん。

椿にとっては親友のような、お姉さんのような存在だったのかもしれません。

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保育士も合間に来てくれて、椿が作りたいといった自動販売機の作り方を調べてくれて、作り方の冊子まで作ってくれて、体調をみながらそれが完成する過程を楽しめるように一緒に工作してくれました。

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病院のスタッフみんながそれぞれ椿の支えになってくれ、時に温かく時に厳しく、家族のように接してくれ、椿にとって安心の居場所となっていきました。

【関連記事】

『病気と共に生きる』もくじ

1-1 椿の軌跡 

1-2 椿のカルテ

2-1 心臓病のお話

2-2 椿の病気発覚

2-3 椿の病気解説 

2-4 グレン手術と合併症

2-5 ①フォンタン手術と術前治療

      ②ペースメーカーのおはなし

      ③フォンタン手術後の生活

2-6 ①フォンタン術後症候群

      ②はじめての余命宣告

2-7 ①難治性腹水と腸閉塞と臍ヘルニア手術

      ②病院外で生活するために

      ③「チーム椿」の結成!

2-8 ①発達障害発覚までの経緯-1

      ②発達障害発覚までの経緯-2

      ③発達障害発覚までの経緯-3

      ④発達障害発覚までの経緯-4

      ⑤発達障害と難治性腹水の治療の関係

2-9 ①発達障害とは?

      ②本人へ伝える

      ③発達障害の治療は支援?

      ④取り組んだこと

      ⑤時にはお互い休憩も大事

      ⑥もしわが子が発達障害かもしれないと思ったら…

      ⑦社会的支援について

2-10 ①命のカウントダウン

        ②余命宣告後の過ごし方

2-11 ①最期の14日間-1

        ②最期の14日間-2

        ③椿の生きた最期の1日

        ④椿、旅立ちの日

3-1 ①病気と共にある生活とは

  ②病気と共にある生活とは

  ③病気と共にある生活とは

  ④病気と共にある生活とは

  ⑤病気と共にある生活とは

3-2 ①闘病と家族の在り方

  ②闘病と家族の在り方

  ③闘病と家族の在り方

  ④闘病と家族の在り方

3-3 ①医療との関わり

  ②医療との関わり

  ③医療との関わり

  ④医療との関わり

  ⑤医療との関わり

  ⑥医療との関わり

  ⑦医療との関わり

  ⑧医療との関わり

  ⑨医療との関わり

   ⑩医療との関わり

  ⑪医療との関わり

  ⑫医療との関わり

  ⑬医療との関わり

  ⑭医療との関わり 

  ⑮医療との関わり

 ⑯医療との関わり

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